ある日、池で色鮮やかなオシドリさんに会いました。
「よう、そこのにーちゃん。
お前さんも結婚したらおしどり夫婦になりたいなんて思ってるんじゃないか?
そもそもおしどり夫婦の語源を知ってるか?
オレらオシドリはいつもメスと仲良く寄り添って泳いでいるから、仲の良い夫婦をおしどり夫婦と呼ぶようになったんだ。
だが、残念ながらオシドリにおしどり夫婦なんていない。
俺たちオスはこの色鮮やかなルックスでメスを口説き落とし卵を産ませる。
卵を産めば用なしだ。次のメスを求めておさらばよ。
つまり離婚率は100%だ。
「卵を産ませるまでは、他の男に奪われないように必死にくっついてストーカー行為をするがな!
それを見た人間たちが勘違いしたんだろう。毎年相手が違うにも関わらずに。」
オシドリさんは勝ち誇ったように笑った。
「人間はバカだから、俺らみたいな美しい鳥を見るとすぐ夢を見たがるんだ。
バカな人間にもうひとつ衝撃の事実を教えてやろう。
人間たちが嫌ってるカラスは一生同じ夫婦で寄り添って生きている。
それも繁殖期だけじゃなく、1年中ずっとだ。
色鮮やかで人間に好かれる俺たちがおしどり夫婦じゃなく、真っ黒で嫌われ者のカラスが本当のおしどり夫婦だなんて皮肉な話だと思わないか?
そういうことで、お前はこれからはカラス夫婦を目指すがいいさ。じゃあな。」
そう言ってオシドリさんはメスを探しにどこかへ行ってしまいました。
オシドリさんはああ言ってましたが、良いところもあるんです。
照れて言えなかったのでしょう。
オシドリはメスがタカなどが襲ってきて危険にさらされた時に、羽をバタつかせて傷ついてるフリをして注意を引くという「擬傷行為」を取るを言われています。
命を懸けてメスを守るのです。
オシドリさんは、やっぱり見た目と同じでかっこいいのです。